名越康文

縁とは何か。それは計量不可能な、感覚的かつ個人的な尺度です。客観的に比較できるものではなく、「なんとなくこっちがいいなあ」と感じるということ。それが縁です。 長期的な視野に立つ必要があるときには、感覚的な判断が必要です。「なんとなく」という感覚のほうが、目先の損得よりも、正確でバランスの取れた判断となる。 縁とは何か。これを論理的に語ることは難しいのですが、少なくとも心理学的には、僕らは「自分の知る何かに似ているもの」に対して、縁を感じるようです。 一瞬で「縁」があるか、ないかを判断するなんて、非科学的だと思われるかもしれません。でも、僕らはさまざまなことを「一瞬」で判断しているものなんです。 この感覚を磨いていく。映画のポスターを見て、面白そうかどうかを瞬時に判断する。レストランの前で、美味しそうかどうかを判断する。 「似ている」「同じだ」という類似性の回路を働かせれば、一瞬にして「ここは自分にとって、縁のある場所かどうか」を判断できるようになってくるんです。